名古屋高等裁判所 昭和27年(う)1326号 判決
論旨は原判決が冒頭において「被告人は昭和二十四年一月以来、大垣市丸之内町土建請負業石田組の常傭人夫として就労し、今日に至つた者であるが性短気、酒癖悪るく、常に同僚間に忌嫌されていた処」と認定したのは証拠に基かない独善的な判断と主張するが、原審が適法に取り調べた証人石田豊吉、戸川肇、西井源太郎、津田保の各証言によれば、被告人は、一升位の酒を飲み酒癖が悪く、短気で喧嘩したことも数回あることが認められ、被告人の前科調書によれば、恐喝、傷害、暴行等の前科が五犯あるところから、原判決の通り被告人が性短気、酒癖悪るく常に同僚間に忌嫌せられていたことが十分に認められる。この認定は、原判決の独善的判断ではない。尤も右の証拠の中、証人戸川肇、西井源太郎の各証言以外の証拠は原判決の証拠の標目の中に掲げられていないけれども右のように被告人についての性格の認定は犯罪事実に当らないので、情状に関する事実であるから、原審が適法に証拠調をしている以上判決に掲示しなくても刑訴法第三百三十五条に照し違法と断ずることはできない。量刑に関係する事項は原審が法廷に現れた各証拠によつて判断すればよいのであつて、これを判決に説明する要もなく量刑に関する事項についての証拠を総て判決に掲示しなければならない法則も存しないのである。